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医療が強い施設は安定感抜群

2021年12月30日

近年、「平均寿命」という言葉に代わってよく聞くようになった言葉として「健康寿命」が挙げられます。もともとはWHO(世界保健機関)が最初に提唱し始めた言葉で、定義はいくつかあるようですが、健康上の問題を抱えることなく、制限なく日常生活を送れる期間を指します。ちなみに、2013年に厚生労働省が発表したデータによると、日本人男性は71・19歳、女性が74・21歳となっていて、平均寿命との差はそれぞれ約9年、12年になっています。要するに人生のラスト10年前後は、多くの方が自宅、高齢者住宅、病院などのどこかで介護や医療のお世話になりながら暮らすことになるのです。
あらためての話になりますが、介護と看護、そして医療はそれぞれに性格が異なるものです。とても大雑把な区分にはなってしまうものの、基本的に介護職のスタッフができることは、身体介助(入浴介助・着替え・おむつ交換など)と生活援助(掃除や洗濯の代行、食事の調理・提供)に分類されます。
一方で看護職はかかりつけ医の指示書のもとで、日常的な医療ケア(糖尿病患者のインスリン注射や在宅酸素療法など)にも対応することができます。とはいえ、人の命に関わることですから、杓子定規的な運用ができないのもまた事実。平成24年からは、所定の研修を修了するという条件付きではありますが、喀痰吸引と経管栄養の一部を介護職員が行えるように制度が改定されました。これはあくまで私の予測となりますが、これから介護職の医療行為への関わりはより増えていくのではないかと思います。
なぜなら、単純な老化や肉体の衰えによって介護を必要とする人は一部であり、逆に多くの要介護者が身体介助や生活介助だけでなく、医療行為を必要としている現実があるからです。

医療ニーズは今後もますます高まる

しかし、お住まい相談員と話をしていても、医療面が原因で住まい探しが長期化してしまったり、入居の選択肢が非常に少なくなってしまっている例が多くあります。まだまだ充分な受け入れ体制が整っていないのだと感じさせられますし、今後も高齢者住宅における医療ニーズが高まることは誰が見ても明らかです。また、住み替えをすることなくターミナル・ケアまで対応できる高齢者住宅を求める声もいっそう高まるはずです。ですから、私は運営会社をセッティングする際にも、看護・医療面の充実を重視するようにしています。
より高度な医療行為に対応しようと思えば、看護師の配置、人材の研修・育成、近隣の医療機関とのネットワークの構築などに費用がかさむことでしょう。しかし、数字面だけを見て「人材=コスト」だと捉えて人件費をケチるような運営方針では、この先の競争を勝ち残ってはいけません。長期にわたるパートナーシップを思えば、いまこの段階から人材への投資を惜しまず、ユーザーニーズに応える努力を重ねている運営会社の方がふさわしいに決まっています。
また、医療行為を必要とする方や慢性的な持病を抱えておられる方の場合、どうしても要介護度が高くなります。自立系施設の記事でも触れましたが、現行の介護保険制度のもとでは、いかに要介護度が高い方を受け入れるかが運営側の経営戦略のひとつであり、医療ニーズへの対応は安定的な高齢者住宅運営をもたらします。地主さんの立場から見ると、契約期間中の運営会社の倒産や撤退といったリスクの最小化にもつながるのです。

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