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介護付きに入れる人は少数派

2019年12月27日

私自身もまだこの業界に関わって10年にならないので、はっきりと断言はできないのですが……。古くから事業を営む多くの介護経営者とお話をするなかで感じることがあります。それは、高齢化社会が本格化する前(介護保険制度が成立する前)に「わざわざ」入居を選んだ方というのは、選択を裏付ける資産を持っているケースが多かったのではないかということです。現在でも、充分な資産を背景に安心・安全性の高いシニアライフを求める方はおられると思いますが、私の感覚ではごく少数派にすぎないと感じます。むしろいま増えているのは、のっぴきならない現実を目の前にして望むと望まざるにかかわらず、入居を決断される方。もちろん、以前からそうした方もいたとは思うのですが、高齢者というパイが大きくなることで、その存在がより目立つようになったとも言えます。
なぜ、私がそのように感じるか――。ご説明を差し上げるには、弊社が取り組んでいるウチシルベ事業の存在は切っても切り離せません。

実は、私もウチシルベ事業をスタートして間もないころはお住まい相談員としてご相談者と向き合い、ご希望に合う高齢者住宅を紹介してきました。たいていの場合、お住まい相談員は2~4パターンの選択肢をご用意してご提案するのですが、そのなかでよく頭を悩ませたのが費用の問題でした。医療ニーズへの対応や手厚い介護・看護体制など確かに介護付有料老人ホームには他にはない魅力はありました。ご相談者の希望を全部満たす施設となると、介護付有料老人ホームがぴったりだった、などという例も一度や二度ではありません。でも、予算が合わないと、残念ながらそこまで。その他の条件のなかには我慢できたり、諦めたりできるものがあったにしても、予算に関してはどうにもならないケースがほとんどでした。でも、考えるまでもないですよね。資産の有無は人によってそれぞれですが、持っている額以上は使えないのは、誰しもが同じであるわけです。
ウチシルベには、ゆとりのある暮らしをされていて、「より良い選択」のために相談される方もいます。しかし、「定められた予算内でなんとか満足できる高齢者住宅を探したい」というニーズが圧倒的です。少し乱暴に聞こえるかもしれませんが、お金がある人は最後にはなんとかなるんですよね。選べてしまうからこその贅沢な悩みはあるにしても、すべての悩みに切迫感があるわけではありません。

お住まい相談員たちの悩みも一緒

しかし、後者の場合は違います。「何とか年金の範囲内で」、「食費と介護保険料を含めて15万円以内で」、「生活保護を受給しながらでも入れる施設を」etc.
私自身もお住まい相談員時代に何度も耳にした言葉です。

いま本部、フランチャイズを含めてお住まい相談員は全国に80名近くが在籍していますが、彼らからも多少の地域性の違いこそあれ、同じような話をよく聞きます。「施設探しの面で、弱者の立場にある人のために」と言うと恰好よすぎるかもしれませんが、私たちがウチシルベを立ち上げる際に、それに近い気持ちを抱いていたことは否定できません。ですから、これから先もお住まい相談員たちは同じような悩みに直面し、向き合っていかざるを得ないでしょう。しかし、これは決してウチシルベだけの問題ではなく、日本社会全体が抱えている悩み・不安の縮図だと私は考えます。

一方で、わずか数年の間とはいえ状況が変わってきている部分もあります。私がウチシルベ事業に携わっていたころは、まだサ高住自体がボチボチ出始めていた段階で、いまほど選択肢が広くありませんでした。ですが、現在では競争が激化したことによってさまざまな特長を備えたサ高住、あるいは住宅型有料老人ホームも急増していて、なかには介護付と遜色ないほどの手厚い介護体制を備えている施設も次々と登場しています。

そして、いちばんのポイントとなるのはやはり料金体系です。「老人ホームなんだから介護付って当たり前じゃないの?」と考える方もいるかもしれませんが、介護付は文字通り住まいにすべての介護サービスが付帯した老人ホームを指します。「今月はこのサービスを利用しなかったから」などという事情は一切関係なし。それぞれの入居者の要介護度によって費用が決まっているのです。夜間に何度もナースコールを押す必要がある方など要介護度が高い場合には、どれだけサービスを利用しても費用が変わらない点は安心感でもあります。しかし、経営する側の視点に立てば充分なケアを担保するためには人手が必要になりますし、当然そのコストは入居者が支払う費用に上乗せされていくわけです。
一方で、住宅型やサ高住の場合は、必要に応じて外部サービスを利用します。どの介護サービスを利用するかはご本人やご家族の考え方だけでなく、担当のケア・マネージャーと相談したうえでのことにはなりますが、入居者の要介護度や身体状況に応じて本当に暮らしに欠かせないサポートだけを受けることができるのです。もちろん外部サービスをどれだけ利用するかにもよりますが、一般論としてすべてが費用に含まれた介護付に比べて低く抑えられるケースがもっぱらです。わかりやすくたとえれば、食べ放題3000円で楽しめるブッフェレストランが介護付有料老人ホームで、一品500円でアラカルト注文ができるレストランがサ高住や住宅型と言えそうです。この流れで特養を表現するならば、……。

特養は980円食べ放題を謳っていますが、席数が極めて少なく、いつも大行列でなかなか入店できないレストラン、あたりに落ち着きそうです。

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