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高齢者が本当に求めているもの

2019年11月15日

アプローチの方針を変えると決めてからは、動きの質がまったく変わりました。病院や福祉施設や行政など福祉・医療・介護に関係する機関を回り、高齢者の方が住居に何を求め、生活に何を望んでいるのかを聞きだすことにしたのです。そこで得た内容を入居ツール制作であったり、相談室で交わす会話にフィードバックしたことで、目に見えて周囲の反応がよくなってきました。
特別養護老人ホームに入れずに待機している方はどんな環境を求めているのか――。
実際に在宅介護をする息子さんや娘さんはどのような悩みを抱えているのか――。
高齢者が住まいを選ぶ際の優先順位はどのようになっているのか――。
知れば知るほど、当初のアプローチが見当違いであったことを痛感しました。たとえば、私たちが住宅を探すときであれば部屋の広さや浴室の広さ、オートロックの有無といったハード面や立地、そして費用を勘案して選ぶはずです。しかし、高齢者住宅の場合は違いました。部屋や建物は言ってみれば「必要な機能」がしっかり整っていることが求められていて、むしろ入居した後にどのようなサービスが受けられるのか、というソフト面を重視する傾向がありました。立地にしても同様です。「あちこち出かけたいから便利なところで」と考える方は決してマジョリティではなく、むしろ落ち着いた暮らしが望めてコンパクトな生活圏で暮らせる立地を望まれる方が多いのです。費用を重視するという点は一般の住まい選びと変わりませんが、より切迫した予算のなかで探される方が多いという現実がありました。
事情を早々に理解し、それを踏まえたご提案ができたことで結果的には3か月で満室を実現できました。しかしこうした「気づき」がなければどうなっていたのか。私自身もときどきぞっとすることがあります。正直なところ、当時の私たちにも「立派な建物を作ったのだから大丈夫だろう」「競合が多いエリアではないから、入居希望者は多いだろう」と傲慢に考えていたことは否定できません。でも、ズバリ言ってしまえば運営会社側の都合や事情なんて、ユーザーから見ればどうだっていいのです。絶対に失敗ができない選択であるから、(それがあっているか間違っているかは別として)ユーザーは自分が理想だと思う住まいを探したいという想いが強いのです。
「良い運営会社とはどんな会社なのか?」という質問に対して、私自身明確にひとつの言葉で答えが出せるわけではありません。漠然とした表現にはなってしまうものの、ソフト・ハードの両面でユーザーニーズと彼らの現実に寄り添える高齢者住宅が求められている、という点は断言できます。地主さんの立場からすれば、「人」「会社」「ビジョン」の目利きを通じて、そのような運営会社を事業パートナーに迎えることが肝要なのです。

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