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負けに不思議の負けなし

2019年11月08日

私自身も、これまでたくさんの失敗例を身近に見てきました。幸いにも自分が手掛けた高齢者住宅は全棟がいまも存続しているものの、最初から「私の提案する方法で大丈夫!」と断言できたわけではありません。

たくさんの運営会社や地主さん、設計会社や建設会社の方とともに高齢者住宅のあり方について考え、ときにはお叱りを受けるなかで見えてきたものです。プロ野球界きっての名将、野村克也氏の有名な言葉に「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」というものがありますが、高齢者住宅運営も同じ。はたから見れば危なっかしいような経営スタイルやサービス提供でありながら成功している高齢者住宅はときどき目にする一方で、失敗している事例を見ると、必ずどこかに大きな問題があります。
右に書いたのは私たちからすれば「あるある」レベルのよく見る事例です。細かく見ていくと失敗につながるミスは他にもたくさんありますし、たいていの場合は複数の要因が絡み合って倒産・事業からの撤退につながっていきます。「土地を貸したもののすぐに運営会社が撤退してしまった」「撤退後の面倒は誰も見てくれない」ではもう地主さまの立場からすれば目も当てられません。
先ほどから厳しい話が続いていますが、もしも「考えすぎなくても大丈夫ですよ」とあなたにささやく営業マンがいたのなら、一度そのすべてを疑ってみることをおすすめします。もしも、運用を考えているのがこれまで遊んでいた土地であったとしても、関わるすべての方にとって大きな金額が動くビジネスです。リスクを考えて考えすぎることはないのです。

●介護ノウハウがないまま運営をしている
 (異業種からの参入に多い)
●現場を優遇しすぎて経営が行き詰まる
 (現場出身経営者に多い)
●建物に無駄なコストをかけすぎている
 (建築・不動産出身者に多い)
●見込みの甘い計画で運転資金がショート
 する(1棟めオープン時に多い)

最初のピンチから得た学び

では、頼れる運営会社とはどのような会社になるのでしょうか。ちょうど企業立ち上げ当時の私たちの姿が成功・失敗双方の事例になると思います。
私たちも最初に兵庫県尼崎市で高専賃を立ち上げた当初、途方に暮れることがしばしばありました。
当時は、まだサービス付き高齢者向け住宅が誕生する以前のことでしたし、制度そのものがいまよりもたゆたっていたのは事実です。「高齢者向けの住まいをご用意しましたよ」といくらこちらが言っても一般のユーザーさまから見ればイメージがしづらかったでしょうし、介護・医療関係の方々からは「無認可老人ホームとどこが違うのか?」と厳しい目で見られていたように感じます。
安定した運営のためには、オープン前からある程度の稼働率の見込みを確保しておく(入居予約を受け付けておく)ことは必須ではあったものの、見事なまでに電話は鳴りませんでした。内覧会を開いてもお客さまが一切いないなどということもありました。いま振り返れば、になるのですが、当時の我々は「不動産屋に仲介を頼んでみようか」とこれまでの「住宅」の延長線上にあるものとして高齢者住宅を捉えていました。もちろん、それ自体は間違っていないとは思います。そして、先ほど書いた当時の高齢者住宅をめぐる状況も確かにあったと思います。しかし、決定的に私たちに欠けていたもの。それは入居者やそのご家族が高齢者住宅に何を求めているか、という視点だったのです。

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