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ユーザーニーズから新規事業を立ち上げ

2019年07月25日

「高齢者を大事にしてみんなで支え合って生きていこう」

「家族と地域が一緒になって高齢化社会に対応していこう」

もちろん将来的な理想としてこういった言葉を否定するわけではありません。しかし、実際に現場を目の当たりにした私たちはその耳ざわりの良さに大きな違和感を覚えるようになっていました。企業としての次のステップを考えたときに、もっとも手堅い方法は運営施設を1棟ずつ増やしていくこと。しかし、そのペースでは私たちが関われる高齢者やそのご家族の数なんてたかが知れています。私たちがえみうむ大庄北で見たこと、聞いたこと、感じたこと。それは一施設固有の問題ではなく、日本全体の問題だと強く認識するに至ったのです。高齢者住宅探しに苦労している方がたくさんいるであろうという確信のもと、2009年から「高齢者住宅仲介センター」(現「ウチシルベ」)の名で入居希望者と施設のマッチングを手掛けることになりました。私たちは建設会社のようなハード面のプロでもなければ、ケアマネージャーや運営会社のような介護の専門家でもありません。「専門性」に欠ける部分があったからこそ、エンドユーザーのニーズ、世の中のニーズに沿って事業を進めていくことに抵抗はありませんでしたし、ベンチャー企業ならではの柔軟さを上手に活用できたと考えています。
高齢者向け施設を探す人はさまざまなバックグラウンドのもとに相談を寄せられます。充分な額の年金を手にしていない方、身寄りを亡くされた方、持病を抱えて暮らして来られた方、住み慣れたエリア以外での暮らしをかたくなに拒む方――。原因は必ずしもひとつではなく複層的に重なり合うものであり、それぞれのニーズに合った紹介先の施設をひとつひとつ地道に開拓していきました。

いま振り返って考えると、それまでの私たちは、どうしても自分たちの運営する「えみうむ大庄北」がいちばんの物差しになっていました。でも、たくさんの高齢者住宅に実際に足を運び、運営母体の社長さまや施設スタッフとコミュニケーションをとっていくと、より客観的な立場から物事を見られるようになりました。ひとくちに高齢者住宅といってもそこで提供されているサービスやケアはさまざまでした。

私たちが入ると全員が笑顔で挨拶をしてくれる施設もあれば、一瞥しただけで無関心を装うスタッフばかりのところもあります。実際に自分の親が入居するなら、あるいは自分自身が将来的に入るならどんな施設がいいのかを、当時は私自身もよく考えました。もちろん、心情的な部分だけではなくて、各施設の稼働率など客観的なデータにもたくさん触れたことで、「人気のある=ユーザーのニーズを高いレベルで満たし得る」高齢者住宅の輪郭が少しずつ見えてくるようになったのです。

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